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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)1841号 判決 1949年3月31日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

辯護人丸山正次、同野原松次郎上告趣意第二點について。

しかし、原審の公判調書によれば、所論判決書謄本は、所論のごとく被告人の辯護人より提出し、裁判長はこれを陪席判事と共に一覽し相手方たる檢察官にも示した上記録に編綴したものであること明白である。そしてかように被告の利益に援用するため辯護人より提出し裁判所及び檢察官の閲覽を經た證據については、必ずしも特にこれを被告人に讀聞かせ又は示してその意見辯解を爲さしめる要あるものではない。蓋し證據調は、證據を公判廷に顕出して訴訟関係人に意見辯解を述べる機會を與え、かくしてその合同審究を爲さしめることを目的とするものではあるが、立證者側の提出した證據については、特に必要ある場合を除くの外提出後更らにこれにつき提出者側の意見辯解を爲さしめなければならぬ理由がないからである。

されば、原判決がかゝる手續を經た所論判決書の謄本を證據として採用したからといつて、適法に證據調をしない證據を採用した違法があるとはいえない。論旨は、その理由がない。

同第四點について。

所論旧刑訴第七二條に所論のごとき明文の存すること並びに所論司法警察官代理の聽取書中「栗山ヵ私達ニ」の六字加入について挿入字數の記載のないことは、正に所論のとおりである。しかし右規定は、訓示規定と解すべく、これに違反するも挿入若しくは書類の無効を來すものでないこと當裁判所數次の判例とするところであるのみならず右挿入箇所には認印が施され その筆跡、墨色等他の記載と同一であるから実際正當に挿入されたものと認めることができる。從つて原判決には、所論の違法あるものといえない。本論旨もその理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって旧刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅)

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